
必要書類と提出の流れは?住宅宿泊事業(民泊)の届出手順
「届出は書類さえ出せば終わり」と思っていると、思わぬところでつまずきます。住宅宿泊事業の届出は、書類を1回提出して終わる手続きではありません。物件が要件を満たすかの確認から始まり、消防への相談、書類の収集、システムでの届出、そして営業開始後の名簿と報告まで続きます。
つまずきやすいのは書類の書き方ではなく、その前段階です。賃貸物件なのに賃貸人の承諾書が取れない、マンションの管理規約で禁止されていた、消防設備が足りなかった。この3つが判明するのは、初心者の場合、たいてい物件を契約した後です。
この記事では、届出の全体像と必要書類を整理します。制度そのものの比較は民泊新法の実務ガイド(180日ルール・宿泊者名簿・罰則)を解説、開業全体の工程は民泊開業までの流れを参照してください。
届出の全体像
届出は、都道府県知事等(権限が委譲されている市区では市区長)に対して行います。手続きは、原則として民泊制度運営システムを使ったオンライン届出です。
進める順番は次のとおりです。
- 物件が住宅の要件を満たすかを確認する
- 自治体の条例を確認する
- 賃貸人の承諾、管理規約を確認する
- 消防署へ事前相談する
- 家主居住型か不在型かを決め、必要なら管理業者へ委託する
- 添付書類を集める
- 民泊制度運営システムで届出する
- 標識を掲示して営業を開始する
- 宿泊者名簿の備付けと定期報告を継続する
書類集めは6番目です。ここへ来る前に、2から4で営業できないと分かるケースがあります。物件を契約する前に、この3つを確認しておきます。
届出の前に確認する3つ
自治体の条例
住宅宿泊事業法は年間180日を上限としていますが、自治体が条例でさらに短縮している場合があります。住居専用地域では平日の営業を認めない、特定の期間に限るといった制限です。
繁忙期だけ営業する計画を立てても、条例がその期間を認めていなければ成立しません。物件所在地の自治体へ最初に確認します。
賃貸人の承諾と管理規約
賃貸物件の場合、賃貸借契約に住宅宿泊事業を行える旨が明記されていなければ、賃貸人が承諾していることを証する書面が別途必要になります。転借の場合は、賃貸人と転貸人の双方の承諾が要ります。
区分所有建物(マンション)では、管理規約の写しが必要です。規約で禁止されていなくても明示的な許可がない場合は、管理組合が禁止する方針を決定していないことを確認した誓約書、または法施行後の総会・理事会の議事録が求められます。
「規約に書いていないから大丈夫」——この考え方は通用しません。組合の意思を確認する必要があります。
消防への事前相談
消防法令適合通知書の提出は、住宅宿泊事業法上の必須事項ではありません。ただし施行要領(ガイドライン)で都道府県知事が提出を求めることとされているため、実務上は必要になると考えておきます。
必要な設備は建物の規模、構造、階数、宿泊室の面積で変わります。工事が必要と分かってから慌てないよう、契約前に管轄の消防署へ相談します。詳細は見落とすと面倒!民泊に必要な消防設備と確認の進め方を参照してください。
家主居住型と家主不在型
宿泊中に家主が不在になる場合、または一つの届出住宅の居室数が5を超える場合は、原則として登録住宅宿泊管理業者への委託が必要になります。この場合、管理受託契約書の写しが添付書類に加わります。
委託先の選び方は民泊の自主管理と運営代行を比較で扱います。委託義務に違反すると50万円以下の罰金の対象になるため、自分がどちらに該当するかは先に確定させます。
必要な添付書類
届出書のほかに、次の書類を添付します。個人と法人で内容が変わります。
個人・法人に共通するもの
- 住宅の登記事項証明書
- 住宅の図面(各設備の位置、間取り、床面積が分かるもの)
- 入居者の募集が行われていることを証する書類(該当する場合)
- 随時居住の用に供されていることを証する書類(該当する場合)
- 欠格事由に該当しないことの誓約書
- 賃借人の場合:賃貸人の承諾書
- 転借人の場合:賃貸人と転貸人の双方の承諾書
- 区分所有建物の場合:管理規約の写し
- 規約に定めがない場合:管理組合が禁止の意思を決定していないことを証する書類
- 管理業者へ委託する場合:管理受託契約書の写し
個人の場合に加わるもの
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
- 未成年者の場合:法定代理人の登記事項証明書
法人の場合に加わるもの
- 定款または寄附行為
- 法人の登記事項証明書
- 役員が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の市町村長の証明書
住民票は、都道府県が住民基本台帳ネットワークで存在を確認できる場合は不要ですが、確認できないときに求められることがあります。
書類の名称や様式は改正されることがあります。 実際に提出する際は、民泊制度ポータルサイトの様式集と、届出先の自治体の案内を必ず確認してください。自治体独自の書類が加わる場合もあります。
届出後に続く義務
届出は出発点です。営業を始めた後、次の義務が継続します。
標識の掲示
届出住宅の見やすい場所に、定められた様式の標識を掲示します。違反は30万円以下の罰金の対象です。
宿泊者名簿の備付け
住宅宿泊事業では、予約代表者だけでなく、実際に宿泊する全員について氏名、住所、職業、宿泊日を記載します。日本国内に住所を有しない外国人については、国籍と旅券番号に加えて旅券の写しを保存します。名簿は作成の日から3年間保存し、知事の要求があれば提出します。
様式は自由で、手書きでもスプレッドシートでも構いません。ただし旅券の写しを含む個人情報を扱うため、アクセス権限の管理と保存期間後の削除方法を先に決めておきます。
定期報告
毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の15日までに、それぞれの前2か月分について次を報告します。
- 届出住宅に人を宿泊させた日数
- 宿泊者数
- 延べ宿泊者数
- 国籍別の宿泊者数の内訳
報告は民泊制度運営システムから行います。宿泊実績がない期間でも報告は必要です。 未報告や虚偽報告は30万円以下の罰金の対象になります。
180日の管理
年間の宿泊日数が180日を超えると、住宅宿泊事業の要件を外れ、旅館業法の無許可営業として6月以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。
Airbnbには届出情報を登録すると上限到達時にカレンダーが自動ブロックされる仕組みがありますが、複数のOTAへ掲載している場合は合算での管理が必要です。日数管理の方法は民泊のOTAはどれから始める?でも扱います。
届出のチェックリスト
- 自治体の条例で営業期間が制限されていないか確認したか
- 賃貸物件の場合、賃貸人の承諾書を書面で取得したか
- 転借の場合、賃貸人と転貸人の双方から承諾を得たか
- 区分所有建物の場合、管理規約と管理組合の意思を確認したか
- 消防署へ事前相談し、必要設備と費用を把握したか
- 家主居住型か不在型かを確定し、委託の要否を判断したか
- 個人・法人の別に応じた添付書類を揃えたか
- 様式が最新か、自治体独自の書類がないか確認したか
- 標識、宿泊者名簿、定期報告の運用を決めたか
- 180日の日数管理の方法を決めたか
つまずくのは書類でなく承諾と消防なり。
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