行政書士が解説|民泊運営開始後の義務と注意点
民泊の制度解説

行政書士が解説|民泊運営開始後の義務と注意点

民泊を始めたら、届出を取得して終わりではありません。 運営中にも守らなければならない法的な義務や、近隣トラブルを防ぐための注意点が数多くあります。 本記事では、住宅宿泊事業(民泊新法)の運営を開始した後に必要な義務と注意点をまとめます。 旅館業(簡易宿所、旅館/ホテル)の運営義務は旅館業の運営開始後の義務と注意点で解説しています。

運営開始前の確認事項

民泊運営開始前に、所轄消防署に「防火対象物使用開始届出書」を提出してください(使用開始の7日前まで)。

また、住宅宿泊事業の届出が受理されると、都道府県知事から届出番号が記載された通知書の発行および標識の交付があります。 その標識を指定の場所に掲示して、ようやく営業を開始できます。

住宅宿泊事業者が守るべき義務

① 宿泊者の衛生の確保

住宅宿泊事業者は、定期的な清掃・換気などをして宿泊者の衛生を確保しなければなりません。 具体的には以下の通りです。

  • ダニやカビなどが発生しないよう除湿を心がけ、定期的に清掃・換気等を行う
  • 寝具のシーツ・カバーなど直接人に接触するものは、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替える
  • 循環式浴槽(追い炊き機能付き風呂)がある場合、宿泊者が入れ替わるごとに浴槽の湯を抜き、定期的な洗浄を実施する
  • 宿泊者に感染症の疑いがある場合は保健所に通報し、使用した居室や寝具の消毒・廃棄などの措置を実施する

② 宿泊者の快適性及び利便性の確保

宿泊者が外国人観光客の場合、外国語を用いて以下の案内・情報提供などの必要な措置を講じる必要があります。

  • 届出住宅の設備の使用方法に関する案内
  • 移動のための交通手段に関する情報提供
  • 火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内

③ 宿泊者名簿の備付け

住宅宿泊事業者は、宿泊者の以下の情報を宿泊者名簿に記載し、3年間保管しなければなりません。

  • 氏名・住所・職業・宿泊日
  • 国籍・旅券番号(日本国内に住所を有しない外国人宿泊者の場合)

④ 周辺地域の生活環境への悪影響の防止

住宅宿泊事業者は、宿泊者に対して以下の事項について、書面や口頭で説明する義務があります。

  • 騒音防止に関する事項
  • ごみ処理に関する事項
  • 火災防止に関する事項

⑤ 周辺地域の住民からの苦情対応

宿泊者によるトラブルや迷惑行為などで、周辺住民から苦情が寄せられる恐れがあります。 この事態に適切かつ迅速に対応するため、住宅宿泊事業者は以下のような体制作りが必要です。

  • 深夜早朝を問わず、常時、応答又は電話により対応
  • 緊急時は必要に応じて、警察署・消防署・医療機関などの機関に連絡した後、自らも現場に急行して対応

⑥ 標識の掲示

住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に、交付された標識を継続的に掲示しなければなりません。

⑦ 都道府県知事等への定期報告

住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の15日までに、それぞれの月の前2か月分の宿泊実績を都道府県知事等へ報告しなければなりません。

報告する内容は以下の通りです。

  • 宿泊させた日数
  • 宿泊者数
  • 延べ宿泊者数
  • 国籍別の宿泊者数の内訳

(例:12月15日までに、10月・11月分の上記データを報告)

報告を怠ると、業務改善命令や業務停止命令、事業廃止命令の対象となる可能性があります。

廃棄物処理の注意点

民泊サービスを事業として実施した場合、法的な民泊許可を得ているかどうかに関わらず「事業」に該当します。 したがって、事業である民泊サービスから排出された廃棄物(ゴミ)は「事業系一般廃棄物」または「産業廃棄物」に該当します。

家庭用ゴミとして出すのは重大な違反

多くのヤミ民泊事業者は、民泊サービスで排出されたゴミを家庭用のゴミ収集に出しているようですが、これは廃棄物処理法上の不法投棄にあたり、重大な犯罪です。 逮捕される可能性もあります。

特に注意すべき点として、廃棄物処理法で規定された罰則のほとんどは両罰規定であるため、個人と法人の両方が罰せられます。 また、産業廃棄物の収集運搬許可しか持たない業者に一般廃棄物の収集運搬を委託することも重大な犯罪です。 廃棄物処理法違反は罰則が重く、民泊事業者にとって致命傷になります。

京都市では市議会で民泊サービスの廃棄物問題が取り上げられ、市当局もヤミ民泊の廃棄物問題に厳しく取り締まる姿勢を示しています。

上乗せ条例への対応

住宅宿泊事業法では、自治体が条例によって事業の実施期間を制限する「上乗せ条例」が認められています。 地域によって規制内容は大きく異なるため、営業中も含めて、必ず自治体の担当窓口または公式ウェブサイトで条例の内容を確認してください。

上乗せ条例の有無は、自治体の公式ウェブサイトで「住宅宿泊事業」「民泊条例」などのキーワードで検索するか、保健所や観光課に直接問い合わせることで確認できます。 行政書士への相談も確実な方法です。

ヤミ民泊は犯罪

旅館業の許可を得ず、特区民泊でも住宅宿泊事業でもない形で民泊サービスを実施する「ヤミ民泊」は犯罪です。 必ずいずれかの合法的な制度を利用して届出や許可を受けてください。

まとめ

  • 住宅宿泊事業者は、衛生管理・宿泊者名簿の3年間保管・標識掲示・定期報告など7つの義務を負う
  • 定期報告は2か月ごと(偶数月15日まで)。怠ると業務停止命令等の対象になる
  • 民泊のゴミは事業系一般廃棄物。家庭用ゴミとして出すのは廃棄物処理法違反で重大な犯罪
  • 上乗せ条例は自治体ごとに異なるため、必ず事前確認が必要
  • ヤミ民泊は犯罪であり、合法性を確保する必要がある

よくある質問

Q1. 民泊の定期報告はいつまでに何を報告しますか?

毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の15日までに、それぞれ前2か月分の宿泊実績(宿泊日数・宿泊者数・延べ宿泊者数・国籍別内訳)を都道府県知事等に報告します。 報告を怠ると、業務改善命令・業務停止命令などの対象となる可能性があります。

Q2. 民泊で出たゴミは家庭ゴミとして出してもいいですか?

民泊サービスは「事業」に該当するため、排出されるゴミは事業系一般廃棄物として処理する必要があります。 家庭用ゴミとして出すのは廃棄物処理法上の不法投棄にあたり、刑事罰の対象となる重大な犯罪です。

Q3. 宿泊者名簿はどのくらい保管する必要がありますか?

宿泊者名簿は、氏名・住所・職業・宿泊日(外国人は国籍・旅券番号も)を記載し、3年間保管する必要があります。

Q4. 上乗せ条例とは何ですか?

自治体が条例によって民泊の営業期間などを制限する制度です。 地域によって規制内容が大きく異なるため、営業前だけでなく営業中も自治体の担当窓口や公式サイトで確認してください。


参考情報(公式)

行政書士・宅建士

タミー

大学卒業後、不動産会社での勤務を経て、複数の企業で代表を歴任。現在は「すみれ行政書士」の代表として、幅広いサポートを行っている。民泊・旅館業に関する届出や許認可申請にも精通。

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