
行政書士が解説|旅館業の物件選定と建築・消防要件
本記事では、旅館業法に基づく民泊(簡易宿所営業、旅館/ホテル営業)の物件要件をまとめます。 住宅宿泊事業(民泊新法)の物件要件(住宅の定義・4設備・消防設備)は民泊の物件選定と建築・消防のポイントで解説しています。
旅館業法に基づく民泊は、特区民泊や住宅宿泊事業(民泊新法)を使う場合を除き、施設の所在地を管轄する保健所に申請して旅館業の営業許可を取得することになります。 旅館業法では民泊施設の要件が細かく定められており、満たしていない部分があれば工事・改造が必要です。
旅館業法の施設要件
面積要件
床面積:床面積の合計が33㎡以上(宿泊者が10人未満なら1人あたり3.3㎡以上)あることが必要です。 床面積とは、寝室・浴室・便所・洗面所・その他の宿泊者が通常立ち入る部分を含みます。 以前は宿泊定員に関係なく一律で33㎡以上必要でしたが、平成28年の法改正で1人あたり3.3㎡以上に緩和され、ワンルームマンションでも条件によっては営業可能になりました。
客室床面積(旅館・ホテル営業):旅館・ホテル営業の場合は、客室1室あたり7㎡以上(寝台を置く場合は9㎡以上)の基準が定められています。 なお、2019年の法改正により旅館・ホテル営業の最低客室数(5室)の規制は撤廃されていますが、客室ごとの床面積基準は引き続き適用されます。
客室有効面積:さらに客室有効面積の合計が、定員1人あたり1.5㎡以上必要です。 客室有効面積とは、寝室その他の宿泊者が睡眠・休憩をする場所のみの面積で、机・クローゼット・浴室・洗面などは含みません。 通常のシングルベッドが約1.89㎡なので、すべてシングルベッドを使用する場合は特に気にしなくて大丈夫です。 なお、この「有効面積1.5㎡につき1人」という収容定員の基準は施行令で定められているものではなく、都道府県・市の条例(多くは厚生労働省の「旅館業における衛生管理要領」に基づく)で定められています。 旅館・ホテル・下宿営業では「有効面積3㎡につき1人」としている自治体もあるため、管轄の保健所で確認してください。
面積要件の証明は、測量器具を使って寸法を測り、求積図と求積表(算出根拠明細書)を添付して行います。 0.1㎡でも足りなければ不許可になります。 重要なのは「内のり(壁の内側を基準に計測)」で実寸を計測することです。 建築図面の「壁芯(壁の中心基準)」は実際の内のり面積より広く表記されているため、レーザー測定器などで正確に測量しましょう。
設備要件
具体的な設備要件は自治体の各条例により差があります。 間取り・設備のラフプランができたら保健所で内容のチェックを受け、指示に従って再プランニングを繰り返すのが基本です。
フロント(玄関帳場):住宅にはそもそもなく必ず工事が要るため悩ましい設備ですが、必要・不要は自治体により異なります。 必要であっても代替設備でOKな場合もあります。 条例上フロント不要でも、チェックイン・アウトや本人確認をどうするかの具体的な説明が求められるため、運営・管理しやすいならフロント設置を検討する価値があります。 なお、2019年の旅館業法改正により、旅館・ホテル営業の最低客室数の規制が撤廃され、玄関帳場・フロントの設置も不要となりました(その代わり、ビデオカメラの設置や事故発生時の緊急対応などが条件とされています)。
管理人室:施設内に管理人室を作って24時間(営業時間)体制で管理人を置くのが原則です。 自治体によっては施設内ではなく近隣に管理人室を置いてもよい場合がありますが、緊急時の対応、チェックインから入室までの案内、ビデオカメラの設置など、総合的に管理体制を構築する必要があります。
トイレ:原則として各フロアに最低2つ以上必要です。 マンションの一室で民泊をする場合、ほとんどが1つしかないため増設工事がマストになります。 多くの自治体では以下の数を定めています(この便器数の基準は、厚生労働省の「旅館業における衛生管理要領」に基づき各自治体が条例で定めているものです)。
| 宿泊定員 | 便器数 |
|---|---|
| 5人以下 | 便器2個 |
| 6〜10名 | 便器3個 |
| 11〜15名 | 便器4個 |
| 16〜20名 | 便器5個 |
| 21〜25名 | 便器6個 |
| 26〜30名 | 便器7個 |
男女の比率を50%:50%にしなければならない自治体もあります。
浴室:浴室の要件は自治体により差があります。 シャワーでOKの自治体、浴槽が必要な自治体、男女最低1つずつ必要な自治体などマチマチです。 ユニットバスは基本NGです。 簡易宿所は見知らぬ宿泊者同士が寝泊まりすることを想定しているため、誰かが入浴中に他の人がトイレに行けないという状態は認められません。 なお、旅館・ホテル営業では入浴設備(浴場)を備えることが求められます(近隣に公衆浴場などがあり、入浴設備が不要と認められる場合を除く)。
洗面:原則として定員5人につき1つの洗面設備(給水栓数)が必要です。 洗面も浴室・トイレから独立していなければなりません。 キッチンの流しを洗面にすることは可能ですが、その場合はキッチン機能を持たせることはできません。
窓:客室には、外気に面し自然光が取り入れられ、かつ壁面に設けた窓(客室有効面積の10%以上を目安)が必要です。
建築基準法と旅館業の関係
用途地域
簡易宿泊所型民泊は旅館業許可を取得して実施するため、実施可能な用途地域が限られています。 また、特区民泊に関しても、旅館業に準じて実施可能な用途地域が限られています。特区民泊は自治体ごとに条例や運用が異なるため、物件所在地の自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。
住居専用地域では旅館業は原則として建築基準法により認められません。
旅館業での営業が可能な地域は、以下の通りです。
- 第一種住居地域
- 第二種住居地域
- 準住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
なお、「工業地域」では、建築基準法上ホテル・旅館・簡易宿所の建築が原則認められないため、旅館業を利用した民泊は営業できません。 一方、住宅宿泊事業(住宅としての届出)は、住宅の建築が可能な地域であれば届出が認められる場合もあります(民泊の物件選定と建築・消防のポイントで解説)。 候補物件の用途地域での可否は、自治体の建築担当窓口に必ず確認してください。
民泊用の物件を選定する際には、当該建物の立っている敷地に関して用途地域の確認が必須です。 また、防火地域・準防火地域では建物の構造が防火規制に適合している必要があります。
用途地域の13分類
用途地域は都市計画法で13種類に分類されます(平成30年4月施行の改正で「田園住居地域」が追加)。 民泊(旅館業)の営業ができるのはそのうち6つのみで、どんなに民泊に適した立地・構造であっても、住居専用地域にかかっていれば一切営業できません。
| 用途地域 | 民泊(旅館業) |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | ✕ |
| 第二種低層住居専用地域 | ✕ |
| 田園住居地域 | ✕ |
| 第一種中高層住居専用地域 | ✕ |
| 第二種中高層住居専用地域 | ✕ |
| 第一種住居地域 | 〇 |
| 第二種住居地域 | 〇 |
| 準住居地域 | 〇 |
| 近隣商業地域 | 〇 |
| 商業地域 | 〇 |
| 準工業地域 | 〇 |
| 工業地域 | ✕ |
| 工業専用地域 | ✕ |
候補物件がどのような用途地域なのかは役所で教えてもらえます。 大まかなものはインターネット上でも調べられます。
各用途地域で建築可能な建物(参考)
旅館業(簡易宿所)の営業可否は、その用途地域で「ホテル・旅館」を建築できるかどうかで決まります。 各用途地域の建築可能な建物の概要は以下の通りです(都市計画法の定め)。
| 用途地域 | 建築可能な建物の概要 |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅の良好な住環境を守る地域。床面積の合計が50㎡までの住居を兼ねた一定条件の店舗や、小規模な公共施設、小中学校、診療所など |
| 第二種低層住居専用地域 | 主に低層住宅の良好な住環境を守る地域。150㎡までの一定条件の店舗など |
| 田園住居地域 | 農地と低層住宅が調和した環境を守る地域。低層住居専用地域に近い規制で、農産物直売所など地域に関連する一定条件の店舗も可 |
| 第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅の良好な住環境を守る地域。500㎡までの一定条件の店舗、中規模な公共施設、病院・大学など |
| 第二種中高層住居専用地域 | 主に中高層住宅の良好な住環境を守る地域。1,500㎡までの一定条件の店舗や事務所など |
| 第一種住居地域 | 住居の環境を保護する地域。3,000㎡までの一定条件の店舗・事務所・ホテル、環境影響の小さいごく小規模な工場など |
| 第二種住居地域 | 主に住居の環境を保護する地域。10,000㎡までの一定条件の店舗・事務所・ホテル・パチンコ屋・カラオケボックス、ごく小規模な工場など |
| 準住居地域 | 道路沿道等で自動車関連施設などと住居が調和した環境を保護する地域。10,000㎡までの一定条件の店舗・事務所・ホテル、小規模の映画館、車庫・倉庫など |
| 近隣商業地域 | 近隣住民の日用品の買い物のための店舗等の利便増進を図る地域。ほとんどの商業施設・事務所、住宅・店舗・ホテル・映画館、小規模の工場など |
| 商業地域 | 主に商業等の業務の利便増進を図る地域。ほとんどの商業施設・事務所、住宅・店舗・ホテル、映画館、倉庫、小規模の工場、風俗営業関係施設など |
| 準工業地域 | 主に環境悪化の恐れのない工場の利便を図る地域。軽工業の工場、住宅や商店など |
| 工業地域 | 主に工業の業務の利便増進を図る地域。すべての工場、住宅・店舗。学校・病院・ホテル等は不可 |
| 工業専用地域 | 工業の業務の利便増進を図る地域。すべての工場。住宅・物品販売店舗・飲食店・学校・病院・ホテル・福祉施設等は不可 |
物件調査で確認すべきその他のポイント
用途地域をクリアしたら、以下の点も確認します。
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地域地区の確認:特別用途地区、高度地区、高度利用地区、高層住居誘導地区、特例容積率適用地区、特定街区、都市再生特別地区、防火地域・準防火地域、災害危険区域、景観地区(美観地区)、風致地区、特定用途制限地域、駐車場整備地区、緑地保全地域、生産緑地地区、伝統的建造物群保存地区など。例えば学校が多く「文教地区」に指定された場所では、一切営業ができません。役所の担当者も人間のためミスがないとは限らないので、必ず自分の目で資料を確認しましょう
-
近隣の教育関係機関の調査:旅館業法第3条3項に掲げる施設が近隣(概ね100m程度。※「程度」なので110m超でも対象となる場合あり)にある場合、保健所が意見照会をかけます。対象となる施設は以下の通りです(大学は含みません)。
- 学校教育施設:小学校・中学校・高等学校・幼稚園・養護学校など
- 児童福祉施設:保育所・児童厚生施設・母子生活支援施設・助産施設・乳児院など
- 社会教育施設:図書館・外国人学校・博物館・公園・児童遊園・スポーツ施設など
照会の結果、合理的な反対意見が多い場合などは許可が下りない可能性があります。 風営法のように近隣に保護対象施設があったら即NGというわけではなく、保健所の判断で許可が下りる可能性もありますが、許可申請は内装工事完了後でなければできないため、工事後に反対が出ると数百万円規模の損失になりかねません。 該当しそうな場合は、工事着工前に意見照会をかけてもらう方法があるので、民泊専門の行政書士等に相談することをおすすめします。
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専用通路の確認:東京都などの自治体では「宿泊者が利用する廊下・階段・エレベーターその他の通路は、専用のものとすること」という審査基準があります。この基準により、区分所有マンションの一室やワンフロアのみでは、宿泊者が共有の廊下・階段を利用することになり、原則として許可が下りません。1階の部屋が直接道路に面するなど、宿泊者が共用部分を通らない構造であれば可能なケースもありますが、それ以外はほぼ困難と考えてください
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管理規約の確認:区分所有物件(マンション)の場合は、管理規約で民泊・宿泊が禁止されていないかを必ず確認してください。「物件を契約したが管理規約で営業できなかった」というのが最も多いトラブル事例です
建物の用途変更
建築基準法では、建物の用途に応じて細かな基準が規定されています。 ある建築物の用途を、当初の用途から他の用途に変更する場合には手続きが必要であり、これを「用途変更」といいます。
例えば、共同住宅を旅館に変えることも、旅館を共同住宅に変えることも、いずれも用途変更となります。 その際に、既存建築物が建築基準法に抵触し違反建築物となることがあります。
特に注意すべき点として、平成9年9月1日以降に新築・増築された共同住宅は、建築基準法改正により共用部分の面積が容積不算入の扱いを受けている可能性が高くなっています。 そのため、「共同住宅」から「ホテル・旅館」に用途変更を行うと、共同住宅に適用されていた容積率の緩和が適用されなくなり、容積率の上限を超えることがあります。
建物の用途変更には高額な費用がかかるため、可能であれば用途変更が不要な物件を選定することがおすすめです。
用途変更の確認申請(200㎡以内は免除)
建築基準法上、建物には用途が定められており、その用途を変更する場合(正確には変更により特殊建築物になる場合)は、原則として確認申請という手続きが必要です。 例えば、マンション(建築基準法では「共同住宅」)を民泊施設(「ホテル又は旅館」)に変更する場合は確認申請が必要です。
ただし例外として、特殊建築物の延べ面積が200㎡以内であれば確認申請が免除されます。 この面積基準は、令和元年6月25日施行の建築基準法改正で「100㎡超」から「200㎡超」に引き上げられました。 確認申請は図面や構造計算が必要で建築士に依頼する必要があり、検査済証がなかったりすると通常数か月かかり、費用も数十万〜数百万円かかる場合があります。 小規模の民泊施設であれば、民泊化後の延べ面積を200㎡以内に抑えるのがセオリーです。
なお、民泊部分が200㎡以下でも、すでに別のフロアに飲食店・物販店などの特殊建築物部分がある場合、その合計(延べ面積)が200㎡を超えると確認申請が必要になります。 あくまで建物単位(民泊化後の延べ面積)で200㎡を超えるかどうかが問題になります。
特殊建築物への適合
確認申請の要否を決める「特殊建築物」の考え方はややこしい点があります。
- マンションや旅館・物販店などは建築基準法上の「特殊建築物」として扱われますが、戸建て住宅や事務所は特殊建築物ではありません
- 用途変更で確認申請が必要なのは、変更により「特殊建築物」になる場合だけです
例えば、50㎡の飲食店と40㎡の物販店(どちらも特殊建築物)があるビルに80㎡の民泊を併設する場合、民泊部分も特殊建築物となるため特殊建築物の延べ面積は170㎡(50+40+80)となり、200㎡以内のため確認申請は不要です。 一方、80㎡の飲食店と70㎡の物販店があるビルに80㎡の民泊を併設する場合は、延べ面積が230㎡で200㎡を超えるため確認申請が必要になります。 特に商業ビルの一部で民泊をやる場合は、専門家に相談することをおすすめします。
なお、確認申請が不要であっても、民泊施設が建築基準法に適合している必要があります。 マンションと宿泊施設では要件がかなり異なり、マンションのまま宿泊施設として営業してしまうと、違法建築として刑事罰・行政罰の対象になります。
東京都建築安全条例に注意
東京都の場合、東京都建築安全条例の以下の2つの要件への適合も確認が必要です(※東京都以外でも類似の条例があるため確認を)。
窓先空地:道路に面していない客室がある場合、窓の外側に一定幅以上の避難用スペースを設け、そこから道路まで1.5m幅以上(床面積200㎡超の場合は2m幅以上)の通路でつなげなければなりません。 これを「窓先空地」といいます。
接道義務:民泊施設には一定の長さ以上道路に接していなければなりません。 民泊部分の床面積が500㎡以下の場合は4m以上です。 奥まった場所にあり、狭い通路で道路に出るような建物では営業できません。 戸建て住宅・事務所など非特殊建築物の場合は接道義務が2mしかないため、これらを民泊にコンバージョンする場合は特に注意が必要です。
消防設備の設置要件
防災上の観点から、民泊施設には何かしらの消防設備を設置しなければなりません。 設置すべき消防設備は、建物の規模や形状、営業形態などで異なります。
主な消防設備
- 自動火災報知設備:民泊施設では原則設置が必要。設置範囲や戸数、機器の種類は面積や構造によって変わる
- 消火器:求められる場合がある
- 誘導灯:求められる場合がある
- スプリンクラー設備:一定規模以上の建物で設置が必要となる場合がある
- 非常用照明器具:設置が求められる場合がある
防火対象物の分類と設備の基準
住宅や事務所を民泊に使用する場合、消防法の要件が変わり、必要な設備が厳しくなる場合があります。 宿泊施設は不特定多数が出入りするため、火災警報や避難の問題が生じるからです。 消防設備が消防法の要件を満たしているかは消防署の立入検査があり、検査をパスしないと許可申請の際に添付が必要な「消防法令適合通知書」が交付されません。
民泊など宿泊施設は、不特定多数が出入りするため「特定防火対象物(旅館・ホテル・宿泊所等)」として扱われます。 ただし、一戸建ては防火対象物ではなく、マンションは防火対象物でも「特定防火対象物」ではないため、民泊に使用すると消防法上の用途が変わり、必要な消防設備が厳しくなります。 建物全体のどの程度を民泊に使うかで、以下のように分類されます。
一戸建ての一部を民泊に使用する場合
| 民泊部分の規模 | 扱い |
|---|---|
| 建物全体の50%未満かつ50㎡以下 | 「一般住宅」として扱われ、消防設備の新規設置は原則不要 |
| 建物全体の50%未満かつ50㎡超 | 「特定複合用途防火対象物」として扱われる |
| 建物全体の50%以上 | 建物全体が「旅館・ホテル・宿泊所等」として扱われる |
アパート・マンションの一部を民泊に使用する場合
使用割合に関係なく「特定複合用途防火対象物」として扱われます。
必要な消防設備
用途が変わった場合、主に以下の設備の設置が義務付けられます。
消火器:建物の総床面積が150㎡以上の場合は設置が必要。地階・無窓階・3階以上の階で50㎡以上の場合も必要です。
自動火災報知設備:すべての民泊部分に必要です。
特定一階段等防火対象物に注意:民泊部分が3階以上にあり、階段が屋内1系統しかない場合は「特定一階段等防火対象物」になり、建物全体(民泊部分以外も)に自動火災報知設備の設置が必要になります。 他のすべての住民の部屋に後から設置させてもらうのは不可能に近く、民泊を諦めざるを得なくなることもあります。 また、火災報知器の受信機についても、再鳴動方式火災受信機(平成9年以降の方式)の設置が必要になり、竪穴区画(階段部)の煙感知器も垂直距離7.5mに1個に増やす必要があります。 3階以上で民泊をやる場合は、特に注意してください。
自動火災報知設備の設置範囲は、以下のように延べ面積で変わります。
| 建物の規模 | 設置範囲 |
|---|---|
| 延べ面積300㎡未満 | 民泊部分のみ(簡易式・ワイヤレス可で比較的費用が安い) |
| 延べ面積300㎡以上500㎡未満かつ民泊部分が10%超 | 建物全体(ワイヤレス不可のためコストがかかる) |
11階以上のマンションの場合は、11階以上の全階・全部屋に必要です。 その他、大きな建物ではスプリンクラーや漏電火災警報器などの設置が必要になる場合があります。
避難器具:2階以上または地階に民泊施設があり、収容人数30人以上なら必要です。 特定一階段等防火対象物の場合は、収容定員10人以上で必要になります。 設置個数は、収容定員100人毎に1個追加になります。
誘導灯:避難口誘導灯・通路誘導灯・誘導標識の3種類に分類され、原則としてすべての設置が必要です。 居室から避難口が見通せる場合など、設置不要の例外もあります。 東京都の場合、100㎡以下の居室の出口には避難口誘導灯の設置が免除されます。 なお、マンションでは避難口誘導灯・通路誘導灯は地階・無窓階・11階以上の階のみ設置義務でしたが、民泊化による用途変更後は追加設置が必要になります(誘導標識はマンションでもすべて必要です)。
防火管理者の専任:建物全体の収容人数が30人以上の場合、防火管理者の専任・届出が必要です(建物全体で1人ではなく、各事業所・テナントごとに必要)。 収容人数は、洋室はベッド数+従業員数、和室は(面積÷3)+従業員数で算出します。 防火管理者には甲種(300㎡以上)と乙種(300㎡未満)があり、小規模の民泊施設なら1日講習で取得できる乙種で大丈夫です(民泊部分の収容人数が30人未満なら乙種で可)。 また、地上3階以上の建物の場合、建物全体で1名の統括防火管理者を選任・届出する必要があります。
消防設備費用を抑えるポイント
必ず事前に所轄消防署へ相談し、具体的な設置義務を確認してください。 物件を購入あるいは賃貸する前の段階から、自身で物件の調査を行うか、専門の代行業者へ相談することをおすすめします。
関連する消防手続き
- 消防用設備等設置届:建物に消防設備を設置する場合、消防署への届出が必要
- 防火対象物使用開始届出書:民泊運営開始前に所轄消防署へ提出(使用開始の7日前まで)
建築・消防の確認の進め方
実務的には、以下の順序で確認作業を進めると有効です。
- 物件情報の整理(所在地、延床、構造、図面の有無)
- 制度の当てはめ(届出・旅館業・特例のどれが最適か)
- 消防事前相談(設備要否や工事の必要性を確認)
- 建築適合の確認(用途や避難要件を図面で照合)
- 申請書作成と提出(補正を見越したスケジュールを確保)
また、旅館業許可の申請では、自動火災報知設備・誘導灯・非常警報設備などの設置が求められる場合があり、用途変更や延床面積、客室数によって要件が変動します。
建築面では、用途地域・容積率・採光・避難の観点で適合性を確認し、必要に応じて用途変更の手続きを検討します。
まとめ
- 旅館業営業は、床面積33㎡(宿泊者10人未満は1人3.3㎡)以上、客室有効面積1人1.5㎡以上、フロント・管理人室・トイレ・浴室・洗面・窓などの設備要件を満たす必要がある
- 住居専用地域では旅館業は不可。営業可能な用途地域は13分類のうち6つのみ
- 共同住宅→旅館への用途変更は、確認申請(民泊化後の延べ面積200㎡超で必要)・容積率超過のリスクがあり、費用も高額になりがち
- 東京都では窓先空地・接道義務(東京都建築安全条例)の確認も必要
- 東京都などの自治体では専用通路の基準があり、マンションの一室・ワンフロアのみでは許可が難しい。区分所有物件は管理規約での宿泊禁止も要確認
- 消防法では民泊は特定防火対象物として扱われ、消火器・自動火災報知設備・避難器具・誘導灯・防火管理者の要件が厳しくなる
- 消防設備の要否は建物ごとに異なるため、必ず所轄消防署へ事前相談する
よくある質問
Q1. 簡易宿所の床面積はどのくらい必要ですか?
床面積の合計が33㎡以上(宿泊者が10人未満なら1人あたり3.3㎡以上)必要です。 また、旅館・ホテル営業の場合は、客室1室あたり7㎡以上(寝台を置く場合は9㎡以上)という基準もあります。
Q2. 住居専用地域で旅館業はできますか?
できません。 旅館業(民泊)の営業が可能な用途地域は、「第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域・近隣商業地域・商業地域・準工業地域」の6つのみです。
Q3. マンションの一室で旅館業を始められますか?
東京都などの自治体では「宿泊者が利用する通路は専用のものとすること」という審査基準があり、区分所有マンションの一室やワンフロアのみでは許可が非常に難しい場合があります。 管理規約での宿泊禁止の有無も要確認です。
Q4. 住宅から旅館へ用途変更する場合、確認申請は必要ですか?
変更により特殊建築物になり、延べ面積が200㎡を超える場合は確認申請が必要です(令和元年6月25日施行の建築基準法改正で100㎡から200㎡に引き上げ)。 200㎡以内なら確認申請は不要ですが、建築基準法への適合自体は必要です。
参考情報(公式)



