行政書士が解説|旅館業法の基礎知識:仕組み・営業の種類・許可制度
民泊の制度解説

行政書士が解説|旅館業法の基礎知識:仕組み・営業の種類・許可制度

旅館業編では、旅館業法に基づく「旅館業」(簡易宿所営業、旅館/ホテル営業)について解説します。 通年営業したい場合や、年間180日の営業日数制限を超えて民泊を運営したい場合は、この旅館業の許可を取得するのが基本となります。 住宅宿泊事業(民泊新法)による「民泊」については民泊編、両者の比較・制度選びについては共通編で解説しています。

旅館業とは

旅館業法の目的

旅館業法(昭和23年法律第138号)は、旅館業の業務の適正な運営を確保し、旅館業の健全な発達を図ることを目的とする法律です。 あわせて、利用者の需要の高度化・多様化に対応したサービスの提供を促進し、公衆衛生と国民生活の向上に寄与することも目的に掲げられています。

旅館業の定義(3要件)

旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されています。 「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」です。

  • 「宿泊料」を受けて
  • 人を「宿泊」させ
  • 「営業」であること

宿泊料に含まれるもの

宿泊料は、名目のいかんを問わず、実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものは含まれます。 例えば、休憩料はもちろん、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費も宿泊料とみなされます。

また、宿泊施設付きの研修施設(セミナーハウス)等が研修費を徴収している場合も、その研修費の中に宿泊料相当のものが含まれないことが明白でない限り、研修費には宿泊料が含まれると推定されます。 ただし、食費やテレビ使用料など、必ずしも宿泊に付随しないサービスの対価は宿泊料には含まれません。

アパート等の貸室業との違い

旅館業がアパート等の貸室業と違う点は、以下の2つです。

  1. 施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること
  2. 施設を利用する宿泊者が、その宿泊する部屋に生活の本拠を有さないこと

「人を宿泊させる」ことであり、生活の本拠を置くような場合、例えばアパートや間借り部屋などは貸室業・貸家業であって旅館業には含まれません。

民泊サービスは原則として旅館業に該当

住宅を利用する場合であっても、有償で繰り返し、宿泊所として提供する「民泊サービス」を行うことは、基本的に旅館業にあたります。 旅館業法に基づく許可を得ることが必要です。

旅館業の種類

旅館業には以下の3種があります(平成30年6月15日の改正により、従来の「ホテル営業」と「旅館営業」が「旅館・ホテル営業」に一本化されました)。

旅館・ホテル営業

施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものです。

  • ホテル営業:洋式の構造及び設備を主とする施設
  • 旅館営業:和式の構造及び設備を主とする施設

簡易宿所営業

宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものです(ペンション、ユースホステルなど)。

民泊サービスを旅館業で行う場合は、この「簡易宿所営業」で許可を取得するのが一般的です。 なお、2018年6月の旅館業法等改正以降は「旅館・ホテル営業」も利用できるようになっています。

下宿営業

施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて人を宿泊させる営業です。

許可制度

旅館業を経営する者は、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長又は区長)の許可を受ける必要があります。 いわゆる「許可制」です(許可と届出の違いは共通編で解説)。

構造設備基準と衛生基準

  • 構造設備基準:旅館業の許可は、旅館業法施行令で定める構造設備基準に従っていなければなりません
  • 衛生基準:旅館業の運営は、都道府県の条例で定める換気・採光・照明・防湿・清潔等の衛生基準に従っていなければなりません

具体的な構造設備基準(面積・設備)は旅館業の物件選定と建築・消防要件で解説します。

申請時期の注意

許可申請は、内装工事が完了した後でなければ行えません。 工事完了後の許可却下は数百万円規模の損失になりかねないため、着工前に物件調査と施設要件の確認を徹底することが最重要です(手続きの詳細は旅館業開業手続きガイドで解説)。

最低床面積の緩和

平成28年4月に簡易宿所の許可基準(最低床面積の基準)が緩和され、従来よりも容易に簡易宿所営業の許可を取得できるようになりました(詳細は旅館業の物件選定と建築・消防要件で解説)。

人的要件(欠格要件)

許可を受けられるのは構造設備基準を満たす施設だけではありません。 申請者自身についても、以下のいずれかに該当する者は欠格事由として許可を受けることができません(詳細は自治体・保健所に確認)。

  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者
  • 一定の刑罰(禁錮・懲役などの拘禁刑、または旅館業法違反などによる罰金刑)を受け、刑の執行終了後から3年を経過していない者
  • 旅館業の許可を取り消され、取り消しの日から3年を経過していない者
  • 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者

許可を受ける際の手数料

許可申請には手数料がかかります。 例として東京都新宿区では、旅館・ホテル営業 30,600円、簡易宿所・下宿営業 16,500円です(自治体によって金額は異なります。行政書士に依頼する場合は別途報酬がかかります)。

旅館業法の適用とならないケース

住宅を使って宿泊サービスの提供を行う場合でも、旅館業法の適用とならないケースがあります。 以下の例が示されています。

  • イベント民泊:多数の集客が見込まれるイベントの開催時に宿泊施設が不足する地域において、自治体の要請に基づき自宅等を提供する場合(イベント民泊ガイドラインが整備されています)
  • 空き家物件への短期居住:移住希望者に対し売買又は賃貸を目的とする空き家物件への短期居住であって、地方公共団体の計画に位置付けられているなど一定の措置が講じられている場合
  • 体験学習:地方公共団体から依頼を受けた地域協議会等が、宿泊者から宿泊料に相当する対価を受けず、当該体験学習に係る指導の対価のみを受ける場合

なお、旅館業法が適用されるか否かは、お近くの保健所へお問い合わせください。

旅館業で民泊を行う場合

旅館業の許可を取得すれば、年間を通じて営業日数の制限なく民泊を運営することが可能です。 民泊事業に利用される許可種別は、主に以下の2つです。

  • 簡易宿所営業:宿泊する場所を多数人で共用する構造・設備が要件。民泊利用では一般的
  • 旅館・ホテル営業:2018年6月の改正で最低客室数の規制が撤廃され、客室1部屋から営業可能に(玄関帳場・フロントの設置も不要となり、その代わりにビデオカメラの設置や事故発生時の緊急対応などが条件)

どちらの種別で許可を取得するかは、施設の構造・設備や運営形態によって異なります。 許可を取得するためには、建築基準法・消防法などの適合確認も必要です(詳しくは旅館業開業手続きガイド旅館業の物件選定と建築・消防要件で解説)。

まとめ

  • 旅館業法は、旅館業の健全な発達と公衆衛生・国民生活の向上を目的とする法律
  • 旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」で、許可制(都道府県知事)
  • 種別は、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業の3種
  • 民泊サービスは原則として旅館業に該当し、簡易宿所営業の許可が一般的
  • 構造設備基準は施行令、衛生基準は都道府県条例で定められる
  • 許可申請は内装工事完了後でなければできないため、事前の物件調査が最重要
  • 許可を取得すれば、営業日数の制限なく通年営業が可能

次のステップとして、開業手続きは旅館業開業手続きガイド、物件の要件は旅館業の物件選定と建築・消防要件、民泊との比較・制度選びは共通編で解説しています。

よくある質問

Q1. 簡易宿所営業と旅館・ホテル営業の違いは何ですか?

簡易宿所営業は宿泊する場所を多数人で共用する構造・設備を主とする営業(ペンション・ユースホステルなど)、旅館・ホテル営業はそれ以外の営業です。 民泊を旅館業で行う場合は簡易宿所営業が一般的ですが、2018年6月の改正以降は旅館・ホテル営業も利用できます。

Q2. 旅館業の許可がなくても民泊はできますか?

住宅宿泊事業(民泊新法)の届出か特区民泊の認定を受ければ、旅館業の許可なしで民泊営業ができます。 いずれの手続きも取らずに行う「ヤミ民泊」は犯罪です。

Q3. 旅館業の許可申請には手数料がかかりますか?

かかります。 例として東京都新宿区では、旅館・ホテル営業30,600円、簡易宿所・下宿営業16,500円です(自治体により異なります)。 行政書士に依頼する場合は、別途報酬がかかります。

Q4. 誰でも旅館業の許可を取得できますか?

破産手続開始の決定を受けて復権していない者、一定の刑罰を受け執行終了後3年を経過していない者、許可取消から3年を経過していない者、暴力団員等に該当する者は、欠格事由として許可を受けることができません。


参考情報(公式)

行政書士・宅建士

タミー

大学卒業後、不動産会社での勤務を経て、複数の企業で代表を歴任。現在は「すみれ行政書士」の代表として、幅広いサポートを行っている。民泊・旅館業に関する届出や許認可申請にも精通。

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